1. 原文(省略なし)
孫子曰:
争地者,我得則利,人得亦利;
交地者,我往則利,人來亦利;
衢地者,四達之道也,先居者制人,後至者受敵。争地則速戰無留,
交地則和衆合隣,
衢地則固其交,利其商,而以衆養兵。
2. 現代語訳
孫子が言う:
- 争地 とは、我が軍が取っても相手が取っても共に利益(資源・交通)がある土地。
- 交地 とは、こちらが行っても相手が来ても利益となる国境接触地。
- 衢地 とは、四方に道路が通じる交差点地帯で、先に占めた者が主導権を握り、遅れた者は四面から敵を受ける。
- 争地では 速戦、長居は禁物。
- 交地では 同盟・協調 を図る。
- 衢地では 交通を固め、商業を活かし、兵站を地元の富で養う べし。
3. 三地形の比較
地形 | キーワード | 典型ロケーション | 基本指針 |
---|---|---|---|
争地 | 資源・短期攻防 | 水源・橋頭・肥沃平原 | 速戦即決 |
交地 | 国境・民心 | 緩衝帯・民族混住地 | 和衆合隣(外交+宣伝) |
衢地 | 物流・経済 | 十字街・河港・峠越 | 交通掌握+経済徴発 |
4. 戦術フレーム
4‑A 争地:タイムアタック型
- 偵察 24h 以内 → 兵力比・地形把握
- 72h 以内に主陣形を確定
- 包囲より突破:素早く一点突破し確定線を作る
- 占領後は即撤収 or 要塞化:長く留まらない
4‑B 交地:情報戦+アライアンス型
- 住民工作:布施・医療・治安維持で好感を獲得
- 宣伝戦:敵国民に不信を醸成
- 隣国同盟:外交儀礼を強化し、背後の不安を消す
- 兵力節約:戦闘より民心と条約で主導権
4‑C 衢地:ロジスティクス掌握型
- 道路・河港・倉庫を即封鎖/接収
- 徴税・商税で軍費確保
- 市場監視:価格動向で敵補給を察知
- 分岐路に堡塁:遅れて来た敵軍を分断
5. ケーススタディ
ケース | 地形 | 成功要因 |
---|---|---|
A:河川渡河点を 48h で奪取し、仮橋を焼却 | 争地 | 速戦即決・敵の追撃を遮断 |
B:国境都市で診療所と市場減税を実施 | 交地 | 民心獲得→敵国側住民が情報提供 |
C:山間十字路を封鎖し通行税を導入 | 衢地 | 自軍の兵站が自給化、敵は長迂回 |
6. 現代への応用
兵法概念 | ビジネス/政治訳 | 実践ヒント |
---|---|---|
争地:速戦 | ホットな新技術特許 | 先に出願→技術標準を掌握 |
交地:和衆合隣 | 共同市場/FTA 交渉 | ビルドウィン戦略で競合も巻き込む |
衢地:交通制圧 | デジタルプラットフォームのゲートウェイ | API/決済ハブを押さえ課金モデルで軍資金化 |
7. チェックリスト(争・交・衢)
- 争地:D+7 日以内に決着プランは?
- 交地:民・隣国向け情報戦ロードマップは?
- 衢地:物流・金融フローを把握したダッシュボードは持ったか?
8. まとめ
- 争地:資源争奪 → スピード勝負
- 交地:国境・民心 → 外交と心理戦
- 衢地:物流交差点 → 経済力で継戦支援
- 三地とも “主導権が曖昧な中間領域”。ここで優位を築けるかが、後の 重地・圮地・囲地・死地 での生死を左右する。
次回予告
第42回【九地篇(3)】重地・圮地・囲地――引くに引けない“重圧ゾーン”の処方箋
- 自国奥深く/敵国深奥に入った際の補給・士気・退路問題
- “重” の蓄積を 勢篇の爆発力 に転換する方法を解説
どうぞご期待ください!
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