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『孫子の兵法』第七篇「軍争篇」

第29回【軍争篇(3)】軍争篇の総括――先手を制し、行軍と補給を支配する

軍争篇は、『孫子』の第7篇でありながら、行軍や補給線、先手必勝に関する実務的な知見が詰まった章です。計篇~勢篇・虚実篇までの諸概念(戦略的準備、不敗の態勢、攻撃の勢、敵の誘導)を、実際の移動と地形の観点で応用する形になっています。前回【軍争篇(2)】では、「先に要衝を押さえる」「危険なルートは避ける」など、より具体的な行軍法を学びました。本稿【軍争篇(3)】では、軍争篇全体をまとめ直し、次章「九変(きゅうへん)篇」へとつなげます。
『孫子の兵法』第七篇「軍争篇」

第28回【軍争篇(2)】先手必勝の要領――行軍と補給線の管理

計篇から続いてきた『孫子』の兵法論も、軍争篇に入って実際の移動戦・補給戦の要点を探る段階に移りました。前回は「先に要衝を押さえてしまえば相手は後手に回り疲弊する」という大原則を示しましたが、軍争篇後半では、そのための具体的な行軍ルートの考え方や、補給・民心の活用・遠征時の注意点が説かれます。勢篇・虚実篇で学んだ“奇と正”や“利と害”の駆け引きを、行軍レベルに落とし込む内容とも言えるでしょう。
『孫子の兵法』第七篇「軍争篇」

第27回【軍争篇(1)】機動と地形を制する――先手必勝の要件

虚実篇までで孫子兵法の大枠(戦前分析・詭道・形勢・誘導)が整いました。軍争篇では、実際の行軍や戦場への移動にフォーカスが移り、どうすれば相手より先に有利な地を確保できるか、背後を突かれずに機動力を発揮するかなど、より実務的かつ地形依存の論が展開されます。
『孫子の兵法』第六篇「虚実篇」

第26回【虚実篇(3)】虚実の総括――形・勢・虚実の三位一体

虚実篇は、「相手をどう誘導し、弱点(虚)を突くか」を具体的に示す章でした。計篇から勢篇にかけては、自軍の不敗態勢や攻撃の加速(形・勢)を主眼に置いていましたが、虚実篇ではさらに敵軍を翻弄する要素が加わり、兵法の「詭道(きどう)」がより立体的に展開されます。
仏教

「第一の矢・第二の矢」の教え

「第一の矢・第二の矢」の教えは、パーリ語経典の『サンユッタ・ニカーヤ』(相応部)第36相応第6経に登場する「サッラッタ(サッラ)経(Sallatha Sutta、別名『矢の経』)」に由来します​。この経典でブッダ(釈尊)は、苦痛に対する弟子と凡夫(仏法を知らない一般人)の違いを説く中で、一つ目の矢と二つ目の矢のたとえを用いています。漢訳では『雑阿含経』巻17第470経「箭経」としても伝わっており​、初期仏教の教えとして両伝統に残っています(大乗仏典そのものではなく、根本仏教の経典に位置づけられます)。
『孫子の兵法』第六篇「虚実篇」

第25回【虚実篇(2)】“虚を突き、実を避ける”の実際――敵を動かす技術

虚実篇の核心は、相手の強み(実)と弱み(虚)を正確に見極め、最低限の消耗で相手を崩す戦略です。形篇や勢篇で、不敗の態勢と攻撃の爆発力を学んできたように、虚実篇ではさらに相手の立場・心理を誘導する要素が強調されます。今回【虚実篇(2)】は、その後半部分を読み解きつつ、”奇正”にも繋がる誘導と欺瞞の技術を具体化していきましょう。
『孫子の兵法』第六篇「虚実篇」

第24回【虚実篇(1)】“虚”を突き“実”を避ける――奇正を深化する戦略

計篇・作戦篇・謀攻篇・形篇・勢篇と学んできたように、孫子は「戦う前に勝つ道筋を作る」ことを一貫して重視してきました。虚実篇は、さらにその戦術面を深め、敵の弱点(虚)を突き、自軍が不利な地点(実)を回避することで最小限の消耗で最大効果を得る方法を論じます。これは前章・勢篇の「奇と正」概念とも緊密に関連し、相手の虚を巧みに作り出しつつ、自軍は“実”を保ち続ける考え方につながっていきます。
『孫子の兵法』第五篇「勢篇」

第23回【勢篇(3)】“勢”の総括――奇正を操り、攻守を一瞬で転換する

これまでの勢篇(1)・(2)で、孫子が説く“勢”とは何か、その基本概念や具体的運用例(奇正の使い分け、リズムの取り方)を学んできました。今回【勢篇(3)】は、勢篇全体のまとめとして、形篇で作り上げた“守り”を基盤にどう“勢”を重ね、最小限のコストで最大効果の攻撃を成し遂げるのかを再確認します。加えて、次回以降に登場する「虚実篇」へと繋がる視点も示唆し、孫子兵法が立体的に展開される様子をイメージできるようにします。
『孫子の兵法』第五篇「勢篇」

第22回【勢篇(2)】奇正とリズム――“勢”を最大化する攻守の切り替え

勢篇では、“形”が土台となった上で、攻撃を決定づけるエネルギーの集中やタイミング(節)をどのように作り出すかが論じられます。前回は勢篇の冒頭で「勢は形によって立ち、形が整えば勢は自然に生じる」と学びました。今回【勢篇(2)】は、その続きとして、実際に奇と正をどう使い分け、どのようにリズムを作れば最小限の力で大きな破壊力を発揮できるのか――勢篇後半の記述を読みながら理解を深めます。
『孫子の兵法』第五篇「勢篇」

第21回【勢篇(1)】“勢”とは何か――エネルギー集中の概念

形篇が強調する「不敗の態勢」を先に作るアプローチに対し、勢篇は、いかに“勢”を生かして勝利を決定づけるかを論じる章です。孫子兵法のなかでも、勢篇は「奇と正(きとせい)」や「勢いの加速度」という概念を通じて、攻守の切り替えや兵力集中の妙を示します。