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『孫子の兵法』第九篇「行軍篇」

第33回【行軍篇(1)】行軍の基本と戦場偵察

行軍篇は、『孫子』が提示する兵法のなかでも“行軍中の注意点”を扱う実務色の強い章です。ここでは、部隊が移動する際の偵察や地形選択、そして民衆との関係など、多角的な観点が示されます。軍争篇ですでに「先手を取るための行動」「要衝の確保」などを学びましたが、行軍篇ではさらに詳細な手法として展開される形になります。本稿【行軍篇(1)】では、行軍篇の冒頭を省略なしで紹介し、まずは行軍の基本と戦場偵察の意義を見ていきましょう。
『孫子の兵法』第八篇「九変篇」

第32回【九変篇(3)】九変の総括――臨機応変の重要性

九変篇は、『孫子』における臨機応変の重要性を扱う章であり、これまで学んできた形篇(不敗の態勢づくり)や勢篇(攻勢の集中力)、虚実篇(相手を誘導する戦略)などの知識を、実際の変化する戦場や地形に合わせて、柔軟に活かすための要諦を示します。本稿【九変篇(3)】は、九変篇全体を総括し、次なる行軍篇・地形篇へと理解をつなげる最終回です。
『孫子の兵法』第八篇「九変篇」

第31回【九変篇(2)】誤った頑固さの危険性――柔軟な方針転換

九変篇では、地形・情勢が複雑に変化する戦場で、将軍がいかに適切な判断を下すかを論じます。前回【九変篇(1)】は、地形の多様性(通・挂・支・隘・険・遠)や、将軍が地形を知らなければ勝ちきれないことなどを確認しました。本稿【九変篇(2)】は、その続きとして、さらに「将軍の頑固さ」や「方針転換の機会を逃す」危険を具体的に示す九変篇の要旨を掘り下げます。
『孫子の兵法』第八篇「九変篇」

第30回【九変篇(1)】多様な戦局と変化への対応

九変篇は、『孫子』全13篇の中でも、地形や戦局の多彩な変化にどう対応するかという視点を強調する章です。ここまで学んできた計篇・形篇・勢篇・虚実篇・軍争篇のエッセンスを踏まえつつ、状況に合わせて柔軟に作戦や指揮を変える必要性を説くのが九変篇の特色となります。短期決戦の志向や、敵を誘導して虚を突く考え方は変わりませんが、より複雑で移ろいやすい戦場をイメージしながら、将軍が陥りがちな失敗例や、その対処策にまで踏み込みます。
『孫子の兵法』第七篇「軍争篇」

第29回【軍争篇(3)】軍争篇の総括――先手を制し、行軍と補給を支配する

軍争篇は、『孫子』の第7篇でありながら、行軍や補給線、先手必勝に関する実務的な知見が詰まった章です。計篇~勢篇・虚実篇までの諸概念(戦略的準備、不敗の態勢、攻撃の勢、敵の誘導)を、実際の移動と地形の観点で応用する形になっています。前回【軍争篇(2)】では、「先に要衝を押さえる」「危険なルートは避ける」など、より具体的な行軍法を学びました。本稿【軍争篇(3)】では、軍争篇全体をまとめ直し、次章「九変(きゅうへん)篇」へとつなげます。
『孫子の兵法』第七篇「軍争篇」

第28回【軍争篇(2)】先手必勝の要領――行軍と補給線の管理

計篇から続いてきた『孫子』の兵法論も、軍争篇に入って実際の移動戦・補給戦の要点を探る段階に移りました。前回は「先に要衝を押さえてしまえば相手は後手に回り疲弊する」という大原則を示しましたが、軍争篇後半では、そのための具体的な行軍ルートの考え方や、補給・民心の活用・遠征時の注意点が説かれます。勢篇・虚実篇で学んだ“奇と正”や“利と害”の駆け引きを、行軍レベルに落とし込む内容とも言えるでしょう。
『孫子の兵法』第七篇「軍争篇」

第27回【軍争篇(1)】機動と地形を制する――先手必勝の要件

虚実篇までで孫子兵法の大枠(戦前分析・詭道・形勢・誘導)が整いました。軍争篇では、実際の行軍や戦場への移動にフォーカスが移り、どうすれば相手より先に有利な地を確保できるか、背後を突かれずに機動力を発揮するかなど、より実務的かつ地形依存の論が展開されます。
『孫子の兵法』第六篇「虚実篇」

第26回【虚実篇(3)】虚実の総括――形・勢・虚実の三位一体

虚実篇は、「相手をどう誘導し、弱点(虚)を突くか」を具体的に示す章でした。計篇から勢篇にかけては、自軍の不敗態勢や攻撃の加速(形・勢)を主眼に置いていましたが、虚実篇ではさらに敵軍を翻弄する要素が加わり、兵法の「詭道(きどう)」がより立体的に展開されます。
仏教

「第一の矢・第二の矢」の教え

「第一の矢・第二の矢」の教えは、パーリ語経典の『サンユッタ・ニカーヤ』(相応部)第36相応第6経に登場する「サッラッタ(サッラ)経(Sallatha Sutta、別名『矢の経』)」に由来します​。この経典でブッダ(釈尊)は、苦痛に対する弟子と凡夫(仏法を知らない一般人)の違いを説く中で、一つ目の矢と二つ目の矢のたとえを用いています。漢訳では『雑阿含経』巻17第470経「箭経」としても伝わっており​、初期仏教の教えとして両伝統に残っています(大乗仏典そのものではなく、根本仏教の経典に位置づけられます)。
『孫子の兵法』第六篇「虚実篇」

第25回【虚実篇(2)】“虚を突き、実を避ける”の実際――敵を動かす技術

虚実篇の核心は、相手の強み(実)と弱み(虚)を正確に見極め、最低限の消耗で相手を崩す戦略です。形篇や勢篇で、不敗の態勢と攻撃の爆発力を学んできたように、虚実篇ではさらに相手の立場・心理を誘導する要素が強調されます。今回【虚実篇(2)】は、その後半部分を読み解きつつ、”奇正”にも繋がる誘導と欺瞞の技術を具体化していきましょう。