1. 地形篇の三層構造
レイヤー | 内容 | 章内の位置 |
---|---|---|
A. 地形そのもの | 通・挂・支・隘・険・遠 | 地形篇(1) |
B. 地形 × 行動 | 六地形 × 奇正の攻守 | 地形篇(2) |
C. 地形 × 組織心理 | 六禍(潰併困挫敗走)と三利(令素行・賞信・罰明) | 地形篇(3) |
ポイント
- A は「どこで」
- B は「どう動く」
- C は「動くときの組織コンディション」
2. 六地形 × 六禍 × 三利 ―― 一覧表
地形 | 主な禍 | 主な利の手当 |
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通形 | 挫(驕慢で突進し返り討ち) | 罰明:統制で隊列維持 |
挂形 | 困(補給線のミス) | 令素行:迂回命令を平時から訓練 |
支形 | 潰/敗(指揮混線) | 賞信:局地的功を即時賞与で士気集中 |
隘形 | 走(恐慌で潰走) | 罰明+賞信:守備功へ明確報奨 |
險形 | 併(小軍で吸収される) | 令素行:増援路を事前指示 |
遠形 | 困/潰(兵站切れ→分裂) | 令素行+賞信:補給計画共有・成果報奨 |
3. 10 行チェックリスト:現場で自問せよ
- この地形は六類型のどれか?
- 攻めか守りか、正と奇の比率は?
- 補給線は何日保つか?
- 退路は複数か単線か?
- 命令系統は一本化されているか?
- 褒賞ルールは兵に浸透しているか?
- 罰則は曖昧になっていないか?
- 地元民は協力的か、避難しつつあるか?
- 自然兆候(塵・鳥獣・夜音)に異変は?
- 敵の動きを 6 時間以内に更新できる偵察ループが生きているか?
これを満たせば 三利が保たれ、六禍の芽が摘まれる。
4. 地形篇 → 九地篇:何が拡張されるか
地形篇 | 九地篇 |
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6 類型(空間の構造) | 9 類型(味方・敵・領域関係まで含む心理地形) |
位置関係と補給 | 散地・軽地・争地・交地・衢地・重地・圮地・囲地・死地 の 9 ステージ |
主要問い: 「ここは攻めやすいか守りやすいか?」 | 主要問い: 「ここで軍の心は散るか結束するか?」 |
換言
- 地形篇 = 地図の凹凸
- 九地篇 = 地図+味方と敵の心理圧力分布
5. 現代への応用 ―― “空間 → 心理空間” へ
兵法概念 | ビジネス転写 |
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隘形で驕ると挫 | ニッチ市場で価格ダンピング→赤字転落 |
重地(九地篇)で結束 | 全社ワンプロダクト集中で IPO 前一体感 |
散地で走禍 | 社員が副業・離職に流れる拡散フェーズ |
行き先(マーケット構造)を知る=地形篇、社員・顧客の心理ステージを読む=九地篇、という 2 層分析が有効。
6. まとめとロードマップ
- 六地形 で地面を知り
- 六禍・三利 で組織状態を管理し
- 次章 九地篇 で “立地×心理” の動的変化を読む
これにより 形(不敗)・勢(攻勢)・虚実(誘導)・軍争(行軍)・九変(柔軟)・地形(地面)・九地(心理地形) が一本の戦略グラフとして繋がります。
次回予告
第40回【九地篇(1)】散地と軽地――“浅い関与”こそ崩れやすい
- 九地篇の冒頭で “散地・軽地・争地” を取り上げ
- なぜ弱い結束は壊れやすいのか、どう深掘りすべきかを解説します。
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