『孫子の兵法』第一篇「計篇」

第10回【計篇(5)】「兵は詭道なり」の本質

これまで4回にわたり、『孫子』の計篇を原文とあわせて丁寧に読み解いてきました。すでに本文そのものは前回までですべて紹介を終えていますが、計篇にはまだまだ考察しうる論点が残されています。
『孫子の兵法』第一篇「計篇」

第9回【計篇(4)】情勢を掴む――情報と分析

前回【計篇(3)】までで、『孫子』計篇の原文をすべて省略なしで読破し、“五事・七計”や“詭道”の概念、さらには「勝可知,而不可為」という核心フレーズまで押さえました。ここまでのポイントを振り返ると、「戦う前にすでに勝利を決める(あるいは負けを回避する)」 という徹底した事前分析・準備の発想が、計篇の要といえるでしょう。今回は、その分析や準備のなかでも特に重要な「情勢の把握」と「情報の活用」について、計篇の内容を再整理しながら掘り下げていきます。
『孫子の兵法』第一篇「計篇」

第8回【計篇(3)】勝可知,而不可為――勝利を見抜く条件

前回【計篇(2)】では、「夫將者,智、信、仁、勇、嚴也」(将に求められる五つの資質)と「兵者,詭道也」(騙し合いを活かす戦略論)を中心に解説し、最後は「此兵家之勝,不可先傳也」という言葉で締めくくりました。今回は、そこから続く本文を「省略なし」で掲載し、「勝利はどう予測できるのか」「勝てる状況をいかに作るのか」 をさらに深く掘り下げます。
『孫子の兵法』第一篇「計篇」

第7回【計篇(2)】智・信・仁・勇・厳――将に求められる資質

前回【計篇(1)】では、兵法の根幹となる「五事」「七計」の重要性や、「兵は国家の死活問題である」という『孫子』冒頭の宣言を学びました。今回はその続きとして、将(指揮官)に求められる五つの資質や、“兵は詭道なり”という有名な一節を含む本文を省略なしで取り上げつつ、現代語訳と解説を行います。
『孫子の兵法』第一篇「計篇」

第6回【計篇(1)】戦いの要:五事と七計

ここからは、いよいよ『孫子』十三篇の第一篇「計篇(けいへん)」に入ります。「計篇」は『孫子』全体の“総論”とも言われ、これから始まる兵法論の基礎を押さえる上で非常に重要な内容が詰まっています。冒頭の言葉、「兵は国家にとって重大事である」という警句から始まり、勝利・敗北を左右する五つの要素(五事)と、戦う前に敵味方を比較考量するための七つの指標(七計)が示されます。
序章

第5回【序章(5)】連載の進め方と原文テキストについて

前回までで、古代中国の戦乱の時代背景や、『孫子』がいかに体系的な兵法論として成立したかを概説してきました。今回は、これから始まる長い旅――すなわち「計篇」から「用間篇」までの全13篇を具体的に読み解いていくにあたっての“ガイド”となる回です。
序章

第4回【序章(4)】古代中国の戦争観と『孫子』の位置づけ

春秋時代(紀元前770年~紀元前403年)から戦国時代(紀元前403年~紀元前221年)にかけての古代中国は、大小の国家が互いに覇権を争う、非常に流動的な時代でした。度重なる戦いが繰り広げられるなかで、いわゆる“諸子百家”と呼ばれる多種多様な思想家・学派が現れ、それぞれが独自の理念を世に説いています。
序章

第3回【序章(3)】兵法書としての特徴と後世への影響

『孫子』は、単なる「戦いのハウツー本」ではありません。国家規模の戦略から個々の将兵の心理、組織運用、情報戦、地形の活用法など、多角的な視点から勝利の条件を論じているところに大きな特徴があります。先人たちは、そうした包括的な戦略論を学ぶことで、戦場だけでなく政治や経営の分野にも応用してきました。
序章

第2回【序章(2)】孫武という人物――史実と伝説

『孫子』の著者と伝えられる「孫武(そんぶ)」は、中国春秋時代の呉王・闔閭(こうりょ)に仕えた将軍とされています。しかし、現代ではその実像が議論の的となることもしばしば。文献上の孫武像は伝説的要素が色濃いため、史実かどうかを判断するには資料が乏しいのです。
序章

第1回【序章(1)】世界最古の兵法書「孫子」への招待

はるか古代中国の春秋戦国時代(紀元前770年~紀元前221年)に編纂されたとされる『孫子』は、「世界最古の兵法書」と評されることが多い名著です。単に「戦の方法」を説くだけでなく、戦争を国家の重大事と位置づけ、情報・組織・心理など、多方面から勝利への道筋を分析しています。その思想は現代においても、軍事のみならずビジネスや自己啓発、組織運営など、幅広い分野で応用され続けています。